ペイント一番「作業日記」
コーキングの打ち替えと増し打ちの違いについて
コーキングの打ち替え工法と増し打ち工法の違いについて
窯業系のサイディングボード目地やサッシ廻り、入り隅み、軒天井の取り合い、幕板天端などに施工されているコーキング(シーリング)材の改修工事についてです。
一般的なコーキング材にはいろいろな種類があり、塗料と同じく物により耐久性も変わってきますが、ここでは主に工法について書いて行きたいと思います。
コーキング(シーリング)の改修方法は大きく分けて「打ち替え工法」と、「増し打ち工法」に分かれます。施工する場所により打ち替えがいいのか、増し打ちがいいのか使い分けるのが費用対効果の面においても有効と思われます。
ただ、サイディングやALC外壁のコーキング材は、水密性や防水性を確保する為に施工している為、不適切な施工をした場合、雨漏りにつながる場合があるので、自宅を改修する場合、施工業者さんと現況の劣化状態や、使用するコーキング(シーリング)材について、十分に打ち合わせする事をお勧めいたします。
下の写真は一般的なサイディング外壁のコーキング施工部分の構造写真になります。
コーキング(シーリング)材の役割とは
サイディング外壁やALCパネルは昼夜の寒暖差で膨張と収縮を繰り返し、又、建物自体の収縮、振動などに対応する為の緩衝材の役割を果たし、更に、開口部などから雨水の侵入を防ぐ水密性などを確保する為に施工されている部材です。以上のことから、コーキング材は柔軟性のある低モジュラスの柔らかいコーキング材が適しています。
打ち替え工法とは
既存の古いコーキング(シーリング)材を撤去し、新しくコーキング(シーリング)材を充填し直す工法のことです。大事なことは、既存コーキング材を撤去する際に、出来るだけ古いコーキング材を取り除くことで、撤去の際に中のボンドブレーカーまで剥離した場合、きっちりと2面接着で仕上がる様に、ボンドブレーカーを貼り直してから仕上げる事です。目地間のコーキング材は、目地底に貼り付けてあるボンドブレーカーで施工後シールが切れやすい3面接着でなく、2面接着で仕上がる様になっています。
特にサイディングボードとボードの継ぎ目の目地は、建物の捻じれや、振動などで動く(ワーキングジョイント)さいに目地のコーキングで動きを逃がすので、経年劣化しやすく、築10年もすれば破断や欠落、剥離などのを起こしている場合が多く、打ち増しの場合厚みが1mm程度しか出来なく、耐久性に非常に問題が生しる為、目地の改修は必ず打ち替える必要があります。
増し打ち工法とは
既存の古いコーキングの上に新しくコーキングを充填する工法のことで、十分にコーキングの厚みを確保できない場合は耐久性に問題が生じる場合があります。サイディングボードの目地の継ぎ目には絶対に行わない工法です。
どのような場所に増し打ちで改修するのかというと、窓廻りや入り隅、軒天井とサイディングの取り合いなどです。窓やサッシ、玄関ドア、入り隅などは目地部分に比べると、動きが少ないので、目地部分より劣化が少なく、又、中に金属製のハットジョイナーが入っていないため、古いコーキングを切るためにカッターを入れると、中の透湿性防水シートまで傷つける場合がある為、コーキング材の厚みが十分に確保出来る場合に限り、増し打ちで対応可能です。ただ、既存のコーキング材の劣化状態がひどく、粉上になっている場合は、撤去の上打ち換えするのが望ましい場合もあります。
コーキング材の劣化について
新築時のサイディングボードのコーキングは、太陽光の紫外線にさらされている為当然劣化し、一般的なコーキング材の場合耐久年数は7年~10年位だといわれています。コーキング自体が劣化すると柔軟性がなくなり、かたく固まることで建物の動きに追随出来なくなり、下の写真にあるような破断や欠落、剥離などの症状が出てきます。このような状態になると、外壁材の内側にまで雨水が入り込む原因になります。
下の写真は欠落したコーキング施工部分から雨水がサイディング裏に侵入している写真です。薄く茶色に滲んでいるのは、柱にまわった雨水の木の滲みが透湿性防水シートに回っている為です。
サッシ廻りの増し打ちについて
サッシ廻りには新築時コーキング材を施工する前に、バックアップ材が入れられている場合が多く、それ自体が悪いわけではないのですが、現場でコーキングの厚みが1mm~2mm位しか充填されていないサッシをよく目にします。そのような場合、打ち替えで施工した場合、1mm~2mmのコーキング材を撤去し、新しく打ち替えたとしても十分に厚みを確保することが出来ず、早期にコーキング材の剥離や破断が起きる可能性が高いので、三角シールで厚みを十分に確保して施工したほうが耐久性も上がる場合があります。又、ネット上でサッシ廻りなど全て打ち替えでないと手抜き工事だと、声高に叫んでいるような動画など目にしますが、現況の状態に応じて施工すれば、より耐久性などが向上した施工が出来ると思います。
入り隅の増し打ちについて
入り隅部分も、カッターを入れて既存のコーキング材を撤去しようとすると、内部の透湿性防水シートを傷つける場合がある為、初めての改修工事では打ち増しで十分に厚みを確保した改修工事で耐久性など問題なく施工できます。
下の写真はベランダや玄関付近の、サイディング外壁を施工する前の透湿性防水シートの状態と、サイディング施工後の同じ場所の写真です。
又、軒天井やベランダ上裏と外壁の取り合いは紫外線や風雨がほとんど当たらないので、ベランダ笠木とサイディングの突合部分などは上記と同じ理由で増し打ちで施工します。
目地の打ち替えの注意点について
新築時サイディング目地にもバックアップ材を入れて、コーキング材を施工している場合があります。この場合既存のコーキングが1mm~2mm位しか厚みがない為、バックアップ材を撤去し、改修時のコーキング材の厚みが確保できるように、充填する必要があります。
又、下の写真にある様に、コーキングの撤去時や改修工事の時点で、すでに欠落などによりボンドブレーカーが剥離している場合があります。その場合は2面接着で仕上がる様に、必ずボンドブレーカーを貼りつけてから、コーキングを充填する必要があります。(コーキングを3面接着で施工すると、早期に破断や剥離などのトラブルにつながる原因になる場合があります。)
ALCのサッシ廻りについて
ALCのサッシ廻りのコーキングの経年劣化による雨漏りは非常に多く、改修時には必ず打ち替えで施工するのが望ましいです。ALCのサッシはサイディング外壁のサッシと違い、増し打ちした場合、厚みを1mm程度しか確保できず、又、透湿性防水シートのような2次防水がなく、雨水の侵入は即雨漏りにつながる場合があります。
下の写真はALCのサッシ廻りのコーキングを撤去した写真になります。サッシの角部分は、中が空洞の部分もあり、コーキングの劣化がすぐに雨漏りにつながるのがよくわかると思います。
下の写真はALCのサッシ廻りのコーキングを撤去している時に、中から雨水が出てきた写真です。
ALCのサッシの面台について
ALCの面台部分のコーキングも打ち替えです。この部分もコーキングの劣化で内部のビスが丸見えになって入り場合がある為、塗装後に変性シリコンで打ち替えします。
下の写真は面台部分のコーキングが劣化のため、すべて落ちてしまって内部のビスが丸見えになってしまった写真です。通常この部分には変性シリコンが施工されています。
ALC面台のコーキングの施工も、他のコーキング部分と同じ方法で撤去、養生、プライマー、充填、ならし、養生撤去の手順で施工していきます。
コーキング施工動画
コーキング(シーリング)の施工手順や施工工程などについては下の動画もぜひご参考にしてください。