塗装後の雨漏れ防止にタスペーサーでカラーベスト屋根の縁切り
カラーベスト屋根、塗装後の雨漏れについて
雨漏れ防止にタスペーサーでカラーベスト屋根の縁切り
「カラーベスト屋根のメンテンナンスで、わざわざ塗装をして雨漏れするなんて!!」とお思いになられると思いますが、カラーベスト屋根は、正しい施工工程を行わない場合、雨漏れの危険性が大いにある屋根材です。
新築時に使用されている、カラーベストの屋根材は、工場で1枚1枚塗装されたものを現場で葺いていきますが、塗り替え塗装では、すでに葺いているカラーベストに塗装するので、屋根全体を塗料で覆ってしまう事(屋根全体をサランラップで覆いつくすような感じ)になります。
要するに、カラーベストの下に廻った雨水や、屋根裏から上がってきた湿気の逃げ道がなくなると言う事です。逃げ場のなくなった雨水が、どこに行くかというと、当然その場に留まる雨水もありますが、カラーベスト屋根を止めている釘を伝って、屋根下地合板を腐朽させる原因にもなります。
新築時に施工されたカラーベスト屋根は、重なり部分などに隙間があり、雨水を排出するため、このような心配はありません。
こちらはカラーベスト屋根の屋根裏の写真です。
この写真を見ると、驚かれる方が多いのですが、下地合板を突き抜けている釘は全てカラーベストを止めている釘です。カラーベストの下に廻った雨水が、この釘を伝って雨漏れを引き起こします。
どのようにして雨漏れが起きるのか説明していきます。
まずは、カラーベストを、どのようにして葺いているか写真を参考にしてください。
- 1枚目の写真はカラーベスト屋根の屋根裏写真です。
- 2枚目の写真は下地合板施工後の写真です。1枚目の写真に写っている写真の下地合板の表側が、この写真の下地合板です。
- 3枚目の写真は防水シートを施工している写真です。
- 4・5枚目の写真は、カラーベストを軒先から棟方向に順に葺いている写真です。
写真の4・5枚目を見て頂くと、よくわかると思いますが、新築時のカラーベストは1枚1枚重ねて葺いていくので、湿気や雨水・空気の通る隙間が出来るため雨漏れの心配はありません。
こちらのイメージ図を見て頂くとわかり易いと思いますが、塗装をすると屋根全体を塗料で覆うので雨水が抜ける箇所が無くなります。
雨漏れの問い合わせをいただき現場調査させていただきました。
現場調査で判明した雨漏れの原因は「カラーベストの縦突合せ目地から雨水が入り、上下重なり部分の小口部分に詰まった塗料が雨水の排出を堰き止めた事で釘を伝って雨漏れを起こしていました。」ときの現場の写真です。
別の現場ですが、10年前のカラーベスト屋根の塗り替え塗装で、縁切りをしていなかった為に、今回、高額な屋根の葺き替え工事に至った現場です。
カラーベスト屋根の下に廻った雨水が釘を伝って、下地合板のコンパネを腐朽させていました。
カラーベスト屋根の縁切りは、半日もかければ難なく終わる工程ですが、当時塗装した職人のちょっとした手抜きです。カラーベスト屋根の塗装では、縁切りは大変重要な工程の一つです。
カラーベストの縁切りについて
ここでは、上記のような「塗装後の雨漏れ」の心配がないように、適切な縁切りの仕方を書いていきます。
以前は、こちらのイメージ図にあるように、塗装後の縁切りは、カッターや皮スキなどを使って施工していました。ただ、この方法では、塗装後の塗膜を傷つけ、カラーベスト屋根の破損などのトラブルが起きやすく、また、数百枚のカラーベストを1枚1枚縁切りしていくので、施工コストもばかになりませんでした。
近年は、セイム社のタスペーサーという縁切り部材の開発で、簡易に、しかも確実に、カラーベスト屋根の縁切りが出来るようになりました。
こちらのイメージ図のように、カラーベスト重なり部分にタスペーサーを差し込んでいくことで重なり部分に隙間が出来、カラーベスト下に廻った雨水が外部に排出される隙間が出来ます。
セイム社のタスペーサーは、カラーベスト1枚につき1か所差し込むシングル工法と、1枚につき2か所差し込むダブル工法があります。
メーカーはダブル工法を推奨していて、当社も当然ダブル工法で施工します。
当社がダブル工法を推奨する理由は、シングル工法では、ほとんど意味がないように思うのです。中にはシングル工法で施工している塗装店もあるようです。
当社がダブル工法を推奨するダブル工法では、カラーベスト屋根を止めている両サイドの釘付近にタスペーサーを差し込む事で、釘付近に溜まった雨水を素早く排出できます。シングル工法では、カラーベスト1枚につき中央付近にタスペーサーを1か所差し込むだけなので、中央部分が浮くだけで雨水の排出に余り意味が無いため、当社ではダブル工法を推奨しています。
こちらの写真は、破損したカラーベスト屋根の補修前の写真です。
(カラーベストの破損補修はこちらをご参考にして下さい。)カラーベストを止めている釘の位置がよくわかると思います。
写真にあるように、縦の突合せ目地から入った雨水が、カラーベストを止めている釘付近に溜まった雨水を、タスペーサーを施工することで排出されます。(丸く銀色に光っているのが釘頭です。)
こちらの写真は、他店の塗装屋さんで施工したカラーベスト屋根の塗装後の写真です。
カラーベスト1枚に付き、中央付近に1か所タスペーサーを差し込むシングル工法の施工です。
この工法だと、中央付近だけが浮くことになる為、あまり意味が無いように思われます。赤色の○ で囲っているのが、タスペーサーを差し込んだ箇所です。2枚目の写真の〇印は、下のカラーベストを止めている釘があると思われる箇所です。これでは、縦の突合せ目地から入った雨水が、ほとんど抜けないような施工になっています。
カラーベスト1枚に付き2か所差し込むダブル工法で施工した写真です。
こちらの写真は、カラーベストの縁切りをタスペーサーを使って、カラーベスト1枚に付き2か所差し込むダブル工法で施工した写真です。
こちらの写真は、タスペーサーを差し込んだ箇所がわかり易いように赤丸で囲っています。
カラーベスト1枚に付き3か所に、タスペーサーを差し込んでいます。
写真のように、カラーベストの形状により、1枚に付き3か所タスペーサーを差し込まないといけない場合があります。
最後に、タスペーサーを施工しなくてよい場合の説明をしたいと思います。
タスペーサーで縁切りするのは、重なり部分を浮かして、塗料が詰まらないようにする為の工程です。
カラーベスト屋根は、経年劣化で反ったり、浮いたりすることがよくあります。
塗り替え塗装する時期は、築10年前後経過し、既に経年劣化でカラーベストが浮いたり反ったりしている場合があります。
4mm~5mm位の浮きがある場合は縁切りしなくても、塗装後に雨水を排出する隙間が出来るので縁切りの必要はありません。逆に隙間があり過ぎて、タスペーサーを差し込んでも滑り落ちてしまう場合もあります。
こちらの写真は経年劣化で、一部カラーベストが浮いている写真です。
カラーベストは吸水性が高い為、経年劣化による表面の防水性能の低下により、雨水の吸水と乾燥を繰り返す事で、このようにカラーベスト基材が反り返ってしまう事があります。出来るだけこのような状態になる前に塗装するのが望ましいと思われます。